ゆとろぐ。

1991年生まれのゆとり世代の雑記ブログ。

「人を動かす」ための『傾聴』と『承認』と『動機付け』

人を動かすことを目的とする面談の着地点 

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 「会話を通じて人に特定の行動を起こさせるスキル」は、以前も今も、私の仕事において、とても重要です。そのため、そういう系統の本はよく読みます。というわけで、今回は本にもたくさん出てくる『傾聴』と『承認』と、ちょっとおまけで『動機付け』についてまとめます。

 「人が(実際に)特定の行動を起こす」=「人が動く」ことをゴールとする以上、単純にプレゼンが完璧であればいいというものではありません。人間、理路整然と正論をぶつけられてもあんまり動きません。あるいは、感情を込めてドラマチックに訴えかけてもあんまり動きません。

 「 あ ん た ま た 掃 除 し て な い の … … ! 」から始まるお母さんの、熱く感情を込めた至極真っ当なお説教は、あんまり子供の心には響かないのです。

 では、会話(ここでは、一対一での面談を想定)を通じて「人を動かす」ために、「私は何をすれば」いいのでしょうか。

 ここでは詳細は割愛しますが、どうやら昨今の心理学やら何やらの研究によると「人は自分がした約束を守ろうとする(※ ただし自主的に行った場合に限る)そうです。

 先ほどの親子の例でいくと、もし子供が「僕今日からちゃんと掃除するね」と自主的に言った場合、実際に部屋を掃除する確率が高くなる、ということです。したがって、お母さんが子供に掃除をさせたい場合、効果的なのは、お説教ではありません。会話を通して、子供が「ちゃんと掃除するね」と自主的に言い出すように誘導することです。

 私が人が動かしたい場合にも同様です。◯◯します! と相手方が自主的に約束をするよう、面談を通じて誘導を行います。

 ポイントは、あくまでも本人の意思で約束させること。無理矢理に「はーい! ごめんなさい! 掃除するよー!」と言わせると、内心での反発を招き、逆効果になる場合があります。

 さて、面談における誘導に欠かせないのが『傾聴』と『承認』のスキルです。まずは、以下でそれぞれの役割を考察していきます。

『傾聴』の役割

傾聴:(耳を傾けて)熱心に聞くこと。(goo辞書より引用)

 私の思う傾聴の役割は、大きく分けて二つです。

 一つは、「情報収集」です。目の前の人物を動かすためには何が必要か、また逆に何が邪魔になっているか、を探ります。

 子供が掃除をしたがらないことには、何がしかの理由があります。ここのところ新しく買ってもらったゲームに夢中で、掃除どころかゲームをする以外の何もかもが無駄な時間に感じられるのかもしれません。自分の部屋を新しく与えてもらったばかりなので、掃除のやり方がいまいちよくわからないのかもしれません。掃除の必要性は重々承知していて、今まさにやろうとしていたのかもしれません。

 相手の考えていることを知れば知るほど、上手に誘導することができます。

 もう一つは、「相手の受容態勢を整えること」です。相手に自分の言い分を受け入れてもらうには、相手の言い分を満足いくまで聞いてあげることが必要です。

 頭にツノで雷落とすにしろ、仏顔で諭しにかかるにしろ、言葉が相手の右耳から左耳へ受け流されてしまったら効果はありません。ちゃんと聞け! と強制しても、なかなかちゃんと聞いてはもらえません。自発的にちゃんと聞こうと思ってもらうためには、こちらがまずちゃんと聞いてあげるのが回り道のようで最短ルートです。

『傾聴』のささやかなコツ

 さて、傾聴といっても、相手が勝手に喋り続けてくれれば簡単なものですが、現実はなかなかそうはいきません。思っていることを、素直にわかりやすく喋ってくれる他人は、そんなに数多くはいないのです。

 相手の考えていることを引き出すためには、一般的には「質問」を使います。疑問詞のついた投げかけは、相手から必ず返答を引き出します。

 そのため、質問は傾聴において非常に強力なスキルとなりうるのですが、二つほどデメリットがあります。相手に「必ず答えなければという圧を感じさせてしまう」こと、そして「質問に即した内容しか答えてはならないと感じさせてしまう」ことです。

 「圧力」と「限定」が起こるのです。「?」で終わるメールには必ず返信しなければいけない気分になりますよね。圧力がかかっています。また、「今日仕事どうだった?」と書いてあるメールに「明日から忙しくなりそうなんだ」とは返しませんよね。限定されています。

 話をとっとと進めたいときにはいいのですが、相手から広く情報を集めたいとき、深く本音を聞き出したいときには、やや不向きな面があるかもしれません。

 そこでささやかなコツ、「聞き返し」が役立ちます。聞き返しとは、相手の言葉を利用した相槌全般のことです。一番単純な例でいくと、鸚鵡返しです。

 子供「掃除しなきゃって思ったんだけど、ゲームが楽しくて止まんなくて」
 母親「ゲームが楽しくて、止まらなくなったのね」

 こんな感じです。こうした相槌を打たれると、相手は自由に言葉を続けることができます。子供は「そう。だって、もうすぐボス戦で、ほんとにすごくいいところだったんだもの」と続けるかもしれません。逆に、言葉を続けないという自由もあります。質問ではないので、返答は必須ではないのです。

 相手の発言のどの部分を利用するかで、話題の方向性を優しく誘導することもできます。

 子供「掃除しなきゃって思ってたんだけど、ゲームが楽しくて止まんなくて」
 母親「掃除しなきゃって思ってくれていたのね」

 こんな感じです。先ほどの例と同様に、子供は「うん、やらなきゃいけないのはわかってたよ。本当だよ」と続けるかもしれません。もしくは続かないかもしれません。どちらにせよ、こちらが取り上げる部分によって、その後の会話の方向性が柔らかく修正されていきます。こちらも話題の限定ですが、質問に比べると、かなり強制感が薄くなります。

 聞き返しには様々なアレンジver.があるようですが、ここではいったん割愛します。

 ともあれ、聞き返しは傾聴においてとても重要なスキルです。一説によると、相手に満足感を与えるためには、質問:聞き返し=1:2ぐらいの比率がちょうどいいとのことです。

 これがなかなか難しく、相当意識しても、質問:聞き返し=2:1ぐらいになってしまうことがしばしばです。修練あるのみです。

 

『承認』の役割

 承認:① そのことが正当または事実であると認めること。
    ② よしとして、認め許すこと。聞き入れること。(goo辞書より引用)

  私が思う承認の役割は、「心を開かせること」です。言い方を変えると、建前を並べたり嘘をついたりする必要はなく、本音をそのまま口に出していい、と相手に感じさせることです。もしくは、今、この場では、本音を話すことが求められているんだな、と相手に感じさせることです。

 人間は、建前や嘘で本音を隠すことがあります。ゲームが楽しくて掃除を忘れてた、という本音を話すと雷が落ちそうなのであれば、子供は「えーと、今やろうと思ってて……」と嘘をつくかもしれません。相手の機嫌を損ねるかもしれない状況で、人は本音を話しません。

 また、相手の考えを読んだり、気遣いが高じたりするあまり、本音を伝えないこともあります。学生がわからない問題を質問しに行ったとき、先生がとっても忙しそうで、何度も時計を確認しているとします。そうすると、「こういうことなんだけど、今のでわかった?」と問われた生徒は、本当は全然わかっていなくても「よくわかりました。ありがとうございます」と言って先生を送り出すでしょう。相手に求められていない(相手の邪魔になる)状況で、人は本音を話しません。

 そこで、承認を行います。あなたが喋る内容が何であれ、自分は機嫌を損ねることはない、むしろありのままの考えを聞かせてほしいと思っている、とこちらの言葉などによって表現していきます。

 

『承認』のささやかなコツ

 承認=褒めとけばそれっぽいみたいなところはあるのですが、一応ささやかなコツがあります。相手の言動をほんの少しだけポジティブに言い換えることです。

 例をいくつか挙げます。

太郎:「(廊下のゴミを拾ってるところを見られて)いや、何か散らかってたから、気になっちゃって」
花子:「太郎くんは、他人が散らかしたところも、ちゃんと片付ける人なのね」

次郎:「いつも誰にでも良い顔しちゃう。八方美人なんだ」
梅子:「次郎くんは、そこにいる皆に良い気持ちでいてほしいのね」

三郎:「趣味ってほどのものはないなあ。アニメや映画はたまに見るし、漫画とか本読むこともあるけど、どれも中途半端というか……」
薫子:「三郎くんは、すごく興味の幅が広いのね」

 適切なのかはわかりませんが、上記のようなイメージです。

 ぶっちゃけ上から順に、花子「すごいね!」梅子「いいじゃん!」薫子「そんなことないよ!」の一言でポジティブな反応にはなります。が、あえて長々しい台詞にすることには意味があります。相手の実際の言動を元に承認することによって、否定しづらくする効果が得られるのです。

花子:「すごいね!」
太郎:「いやいや全然!」

花子:「太郎くんは、他人が散らかしたところも、ちゃんと片付ける人なのね」
太郎:「いやその、今回はたまたまというか……///」

 事実行ったこと、発した言葉を元に褒められると、完全否定がしづらくなるのです。言う方は言う方で事実を言葉にしているだけなので、ごますり感がなくすんなり言える! ような気が、個人的にはします。

 

それでも「◯◯します!」という言葉が得られないときの『動機付け』

 大抵の場合は、そんなに気合入れて臨まなくてもあっさり決着がつきます。自分の非を認める発言や、改善を約束する発言がかなり早い段階で出てくるんですね。

 ただ、うまくいかない場合もあります。そういうときは別途『動機付け』を行います。「掃除をしないことによるデメリット」「掃除をすることによるメリット」を伝えることにより、掃除をしようという気にさせるんですね。

 ポイントは、相手目線でデメリット・メリットを整理してあげることです。どれだけ腹わたが煮えくり返っていても、掃除をしないと(私に)こんなデメリットがある、掃除をすると(私に)こんなメリットがある、という伝え方ではいけないのです。

 ◯◯しないと(あなたに)こんなデメリットがある、◯◯すると(あなたに)こんなメリットがある、という伝え方が動機付けの基本です。

 

まとめ

 人間は、「自主的に行った約束」を守ろうとします。そのため、面談では、こちらがしてほしい行動に対して、相手からの自主的な「口頭での約束を得ること」を着地点とします。『傾聴』と『承認』スキルをフル活用してそこまで誘導します。辿り着けなさそうな場合は『動機付け』を行います。

 なお、まとめるとまとまりますが、実際は非常にとっちらかってます。

 言わせたいあまりに露骨な誘導してしまうとか。逆に自主性に任せようとするあまりにいつまで経っても話が前に進まなかったりとか。

 反射神経が M U S T です。よく運動神経がいいとか悪いとか言いますが、人と喋るにも会話神経という天性のものの有無が大幅に影響を与えるに違いない、と最近考えてます。私が人と喋ってるととっちらかっていくのは、会話神経がとっちらかっているという生まれつきの才能の欠如のせいなので、仕方がないのです。

 とはいえ仕事なので明日からも頑張ります! おわりっ!