ゆとろぐ。

1991年生まれのゆとり世代の雑記ブログ。

有川浩のおすすめ小説『旅猫リポート』と『県庁おもてなし課』を紹介する。

 本日も、ベッドの中からこんにちは。テンピュールマットレスが家宝の本の虫です。
 同じく本の虫の皆さんなら、きっとうちもうちも! と共感して頂けると思うのですが、棚に入りきらない本が大量に平積みされて、その平積みの高さがついにベッドで寝ている私の顔より高いところまできてしまいました。もしも地震が起きたら、私の死因は本による窒息死でしょう。
 本は好きなのですが本で死ぬのは困るのと、本棚を買うより断然安価だったのでこの一年ほどはKindleを愛用しています。

 さて、今回はそんな本好き人間が、とりわけ好んで読んでいる作家・有川浩の小説を延々と紹介する記事です。ほとんど全部読んでるぐらい好きです。県庁おもてなし課聖地巡礼で馬路村に旅立つぐらいは好きです。(→詳しくはこちら
 ぐいっと読ませる引きがあって、起承転結が明確で、ハッピーエンドが多くて、登場人物に人間味があって安心して入り込める、そんな小説が読みたい方は、是非是非有川さんの小説を読んでみてはどうでしょうか。

 有川さんの小説はどれもそれぞれ好きなので、書きたくなる毎にちょいちょい書き足していきますね。都度記事タイトルも変わると思います。
 何から読もうか迷う人も、一冊毎に毎回テーマががらっと変わるので、あらすじで興味を引かれたものが一番面白く読めると思いますよ〜!

 

旅猫リポート

野良猫のナナは、瀕死の自分を助けてくれたサトルと暮らし始めた。それから五年が経ち、ある事情からサトルはナナを手離すことに。『僕の猫をもらってくれませんか?』一人と一匹は銀色のワゴンで“最後の旅”に出る。懐かしい人々や美しい風景に出会ううちに明かされる、サトルの秘密とは。永遠の絆を描くロードノベル。amazonの紹介文より)

 我輩は猫である
 そんな書き出しから始まる猫の小説をご存知ですね。この旅猫リポートも、猫の一人称で始まる冒頭から、物語が進んでいきます。
 若くて賢くて自分に自信たっぷりの雄の野良猫が、ひょんなことで一人暮らしのサトルの飼い猫になり、ナナという名前を授かります。この、ナナがサトルの飼い猫になった経緯が開幕およそ10ページで語られるのですが、猫好きな人が読むとまずここで泣きます。私は号泣でした。
  ナナは賢く、サトルは猫の扱いに長けていて、一人と一匹はたいへんうまくやっていたのですが、やむを得ない事情でサトルはナナを手放すことになります。この小説は、サトルがナナを手放すための旅の物語です。

僕は何にも失っていない。ナナって名前と、サトルと暮らした五年間を得ただけだ。(本文冒頭部より)

 ナナは賢すぎるぐらい賢い猫で、サトルがやむを得ない事情で自分を手放そうとしているのを重々承知しています。そして、五年過ごしたサトルと別れるのではなく、サトルと暮らした五年間を得た、と受け止めます。
 ナナのプロローグでの独白によって、この旅が失うための旅ではなくて、得るための旅だと定義付けされて、読者と共有された上で、一人と一匹の旅が始まります。

 サトルはナナが今後も幸せに暮らしていけることを望んで、里親になってもいいと言ってくれた友人達のところを訪ねていきます。
 友人達との過去の思い出から垣間見えるサトルの人間性にはじんわりほっこりし、出会う人間達を鋭く分析するナナの猫らしさたっぷりの批評には思わず吹き出してしまいます。

 あたたかく、笑って泣けて、猫の魅力がたっぷり詰まった一冊です。
 猫好きはもちろん、猫が好きじゃないあなたも、読んでしまったらうっかり猫好きになること間違いなし。是非是非手にとってみて下さい。(ただし電車内で読み始めないこと!)

 

県庁おもてなし課

とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員の掛水史貴は、地方振興企画の手始めに地元出身の人気作家・吉門に観光特使を依頼する。が、吉門からは矢継ぎ早に駄目出しの嵐―どうすれば「お役所仕事」から抜け出して、地元に観光客を呼べるんだ!?悩みながらもふるさとに元気を取り戻すべく奮闘する掛水とおもてなし課の、苦しくも輝かしい日々が始まった。地方と恋をカラフルに描く観光エンタテインメント。amazonの紹介文より)

  超スーパーインドア派人間をはるばる高知県馬路村まで聖地巡礼に行かせた奇跡の小説がこれ。(→聖地巡礼の記事はこちら
 高知県は、自然以外は何にもないただのド田舎なのか、それとも観光資源に満ち溢れた希望の土地なのか。高知県庁に実在する「おもてなし課」をモデルにした、「観光立県」がテーマのお仕事小説です。

 さて、何をすれば観光客が来てくれるようになるでしょうか?
 ゼロスタートから何とか一つ企画を打ち出し、よろよろと舵をとるおもてなし課。しかし、観光特使として声をかけた高知県出身の作家・吉門に、それはもうぼろっくそに情け容赦なく駄目出しを食らってしまいます。その直撃を受けた若手職員の掛水は、一瞬めげかけつつも、真正面から「もしまた何かありましたらいつでもご意見ください!」と食らいつきます。
 それが縁となって、吉門と掛水を中心に観光企画が少しずつ前へ動き出すのが物語の始まりです。

 『県庁おもてなし課』は、ど正道のお仕事小説である一方で、とびっきりのやきもき感を味わえる恋愛小説でもあります。
 掛水は、新たにおもてなし課の助手に入った多紀の清々しい立ち居振る舞いに惹かれていきますが、掛水も多紀も真面目で責任感に溢れた性格が災いしてか、恋の進行は仕事以上の難航っぷり。
 一方吉門は、遠い昔に高知に残してきた義理の妹佐和との間に、複雑な関係性を持っているようですが、これがまた吉門の複雑怪奇な捻くれ具合のせいでしょう、一体どう転んでどこに落ち着くのやら、はらはらする展開が待っています。

 出てくる登場人物達は一人一人魅力が掘り下げられていて、仕事の運びも恋愛模様も目が離せません。また、「お役所」と「民間」それぞれの視点が織り合わさって、理解を深めて馴染んでいく様子も、面白くて読み応えがあります。
 これを読んだら思わず高知県に(とりわけ馬路村に!)旅行に行きたくなること間違いなし! 是非是非一度読んでみて下さい。

 おわりっ。